JR和歌山線の吉野口駅を降りて、国道309号線を伝いながら2kmばかり南に進むと両側から山が迫り巾100m足らずの浅い谷間に入る。歩くのがいやな方は近鉄御所駅から今木行きのバスを利用するとよい。マイカーならば309号線に沿って吉野の方に向えば道わきに赤いボケよけ地蔵の旗が建っているのですぐ分かる。そしてその向かい側の山すそに自然石の苔むした石垣の上に本堂の屋根がみえる。
この309号線というのは、昔、山伏が大峰山に通った行者道に沿ってつけられたように思われる。泉徳寺の門から山すそを通って吉野に向う旧道が残っている。行者道であったと共に、紀州方面から伊勢に参る近道でもあった。役の行者の開創と伝えられるだけに天狗山と呼び奇想天外な話が伝わっている。
仁王門棲上に天狗像があり、泉州堺の大寺より一夜の内に仁王天二体を、かかえ飛来したと言う伝説がある。
天狗様は鼻が高く、左右に羽を持ち、団扇を持ち行者の袈裟をかけ腰に小刀を差し、勇壮な姿をして腰打ちかけて眺めている。
辞典に依ると假設の動物であり、佛教の守護人で、空中を飛び、深山に住み蛇を食い、神通自在の力を持つと伝えられている。
宝暦年間の燈籠に天狗山泉徳寺と山号が書かれてあるのも興味あることである。
古事記の安康天皇の頃に白彦の王と黒彦の王と円の大臣が初瀬大王(後の雄略天皇)に殺されたことが出ているが、この三人の陵墓がこの寺の川向いにあって、その菩提寺として今来寺があったというが、それが泉徳寺の前身であろうと思われる。菊の紋が残っている所からみれば相当な格式を持っていたのであろう。境内には500年以上前の石仏が十数体あり、そのそばにはペット霊園が設けられて古さと新しさの入りまじった寺である。
■最寄りの交通機関
JR・近鉄吉野口駅下車、奈良交通バス、御所今木間今木バス停下車徒歩3分
タクシー5分
※大和ペット霊園