特急くろしお号の停車駅白浜駅で下車するとタクシーで8分の距離にある。紀勢線は回数が少ないのでこの方が便利である。案内地図に従って5分ほど歩くと、丘陵の松の緑を背景に大きな本堂の屋根が見える。山門に近づくと、その前にフェンスを廻らした池がある。これが有名な「鳴かずの池」である。この池の蛙はいまだに鳴かないとして、この寺の仮住、竜賀法印の霊力を伝えている。
この寺は鎌倉中期に法燈国師によって開かれ、かつては、七堂伽藍が整い、塔頭寺院並びに寺領もあり、法系も覚元、玉川、亨庵と三代続いたが、やはり豊臣秀吉の紀州攻めの難は免れることができなかったようである。
これを再興したのが臨済宗、田辺海蔵寺の陽雲和尚であった。やがて寛文7年、京都妙心寺の直末となり、この寺もまた、医王寺、弘安寺、西光寺、両願寺、丈六寺の五ヶ寺を末寺として持つこととなる。だが現在残っているのは、丈六寺のみである。廃寺となった寺の本尊様は開山堂に祀られている。
開山堂は本堂に向かって左手前にあり、開山の法燈国師、及び覚元禅師の坐像のほか、前記の廃寺にあったご本尊と、法燈国師が唐より請来された二十体羅漢が祀られている。
正面の本堂は桁行九間、梁行六間のどっしりとした入母屋造りで、背後の山と広い境内にマッチした落ち着いた雰囲気である。本尊千手観音は鎌倉様式の秀作であり子年の人の守本尊でもある。脇に不動明王と愛染明王が置かれているのは、一時密教系であった名残であろうか。時間があれば、広い書院でこの寺にまつわる伝説の一つでも聞かせて頂くのもよいのでは。
■最寄の交通機関
特急くろしお号の停車駅白浜駅下車タクシー8分
きのくに線紀伊富田駅下車徒歩5分