みかんの里、有田川周辺は5月頃になると白いみかんの花が甘酸っぱい芳香を漂わせる。晩秋から冬にかけては黄金色に映えるみかんの山が美しい。ここにぼけよけ五番の浄教寺がある。みかんの花のように、派手な感じはなく、何となく手を合わせたくなる信仰の寺という雰囲気に浸る。総欅造りの百畳敷の本堂に入ると荘厳さと歴史の重みをひしひしと感じる。恵心僧都の作と伝えられる本尊阿弥陀如来は温容あふれる慈悲のほほえみを投げかけて下さっている。両脇壇には、若き弘法大師像と十一面観音、釈迦像、及び木造の彩色地蔵が配されている。
これらは当寺の前身、真言宗神谷山最勝寺より伝えられたものでその他多数の文化財があり別にその収蔵庫があるから拝観させて頂くとよい。
特に県下三大涅槃図や重文の大日如来像、十六羅漢図、十王、十二天、探幽の龍頭観音図などは是非見ておきたいものである。
なお本堂より歩いて10分ほどの所に奥の院法蔵寺がある。天長年間弘法大師が開山され、御自作の観音像が祀られているほか、明恵上人の一刀三礼の大師像があり、明恵上人修行の霊山で一般には大師山と呼ばれており、その周辺に八十八ヶ所霊場と、二百体の水子供養塔がある。八十八ヶ所を設けている寺は他にも多くあるが、この寺では毎年7月20日に霊場巡りや水子供養をする行事となっている事が珍しい。
また、8月20日の晩の会式には夜店が百軒余り出て奉納花火大会があり、有田川に映る火の祭典はお大師様一色の一夜であるとか。そしてこれが百年以上もつづいているというのは驚きでもある。機会をみて是非訪れてみたいものである。
この山に展望台があり、そこから見おろす有田川両岸に広がるみかん山の姿は、ことのほか美しい。
坂村真民先生第百十二番詩碑寺
紀伊之国十三仏霊場曼荼羅寺
■最寄の交通機関
JRきのくに線藤並駅下車タクシー5分
箕島駅・湯浅駅下車タクシー8分